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2009年08月02日

大会レポ『第16回 奥武蔵ウルトラマラソン』by けいた

■申込み

4月某日の宵の口、いつものようにウイスキーを飲みながらネットの閲覧などしていた。
春のレースもほぼ一巡した頃で、そこにふと眼にとまったのが「奥武蔵ウルトラマラソン」だった。
しかし、1月に初めてフルマラソンを走った程度の細い脚で、8月の炎天下の77km、しかも800mの高低差を完走できるイメージはこれっぽっちも湧いてこない・・・はずだった。
なのに、気がついたら申し込みのボタンを「ポチッ!」とクリックしていた。
お酒のせいで気が大きくなっていたのか、それとも魔がさしたのか・・。ともかく、これが始まりだった。



■準備期間

小さい頃からの負けず嫌いで、それなりには努力もしたこともあったが、生まれてこの方本格的なスポーツにはまったく縁がない。
「ウルトラ」など手が届く気すらしないが、「江戸一RC」の掲示板で言ってしまった手前、いまさら後にも引けない・・。ここは開き直ってやるしかないか。

まずは、月間の練習量を200km以上に伸ばそう。
これは苦手の早起きを克服して、平日に朝ランをすることでクリアできた。

次は坂道対策だが、近所に本格的な坂がないのがRCのメンバーの共通した弱みだった。
アップダウンのきついレースを探して、ETC割引きもあって少しくらいは遠くても参加した。
5月の武相マラソン、6月の乗鞍高原、嬬恋高原マラソン・・、
これは逆に折れる気持ちと歩き癖ばかりが身についてしまった。
日々の練習にもなにか坂道対策を取り入れようと、選んだのがジムのトレッドミル。
これは最大15%まで傾斜を作れる「すぐれもの」なのだが、やたら汗ばっかりかいてなにより楽しくない。結局はあまり続かなかった。
そこで某氏のブログで見つけたのが、自宅から4km離れたS公園の180m弱の急勾配で、平日の朝、そして週末と年甲斐もなくダッシュを繰り返した。
朝から上り坂でフーフー言って走るおじさんは、周囲の目からはさぞかし奇異に映っていたと思う。
結果的には、これが脚と心肺には一番効いた気がするが、おかげで会社の午後のひとときは心地よい睡魔との闘いになった。

最後に、鎌北湖からの試走も3回経験した。奥武蔵の坂道は、重力(体重)を数倍も実感、そして後ろに仰け反りそうな強烈な印象だった。特に、2度目は鎌北湖から刈場坂峠までの43kmを6時間かけて往復、これはフルマラソンでも未体験の超ロング走になった。

この3ヵ月半は頭の中は奥武蔵のことばかり、我流の練習ながらやれることはやったし、太股のサイズも少しは大きくなっていた。だが、本番では通用するかはまったくわからない。翌日のスタート時間が早いにもかかわらず、レース前夜はやっぱりいつもの通りウイスキーのお世話になっていた。



■スタート直前

午前3時半、RCのセコさんの車で自宅をスタートする。
ゴルフでもこんなに早い時間にうちを出たことはない。
気がつくと同乗の4人とも奥武蔵は初体験で、早朝のテンションの低さも手伝って、会話が心なしかぎこちなく弾まない。 プレッシャーがかかるとやたらと饒舌になる人もまれにはいるが、やはり普通の人は口数が少なくなるものだ。

5時過ぎには毛呂山公園に到着、続々とRCのメンバーも集まってきて、やおら着替えや準備を始める。天気予報の通り曇天で、きょうは降ることはあっても太陽は出ないと、サングラスやUV対策はしないことにした。今年の長雨・日照不足がこのレースでは自分に幸いするかもしれない。
でも、条件はみんないっしょ・・。

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スタート時間が近づいてきて、レースでは恒例のウォームアップの体操が始まる。

近頃の流行りで女性のリーダーに合わせてアップテンポな音楽で身体を動かすが、ラジオ体操くらいしか経験のない世代にとっては、これが意外と難しい。
ロボットみたいにギクシャクやっていると、横でRCのベテランのメンバーは、はなから音楽など無視して堂々とストレッチをしている。さすがだ・・。

スタート地点でRCメンバー全員の記念撮影、10人を超える最右翼チームのひとつだろう。
「ここにいる全員が無事に帰ってきて欲しい。」と涙ぐんだ某総理のセリフをふと思い出すが、他人事じゃない。帰ってこれるかどうか一番危なっかしいのは自分なのだ。

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ここで目標を頭の中で整理する。
初めてのウルトラで具体的なイメージは湧かないので、とにかくシンプルに・・。

「ノーリタイア!&ノーウォーク!」 

さて、できるかなぁ・・?



■スタート→鎌北湖(18.1km)

午前7時、女性233人を含めた総勢1092人が号砲とともにスタート。

わが50歳代以上も526人と、一般のレースに比べるとずいぶん年齢層が高い。
ハードなレースのはずなのになんで・・。
他のレースではしばしば殺気だって押し合いへし合いすることもあるが、さすがにウルトラは長丁場だけあってみんなユルユルと走り始めて、この雰囲気ってなんかいい。

ところが、スタートのポジションが前過ぎたせいですぐにバンバン抜かれ始めて、RCの仲間もみんな前方に消えていく。スタート直後の5kmは身体が重く足が動かないのは毎度のことなので、焦ってもしょうがない。

ごく普通の道から緩やかな山道に入っていったが、すぐにかなりの急勾配が登場してきた。鎌北湖までの第一クールはウォームアップと体力温存がテーマだったのに、ずいぶんハードで話が違うじゃないか。周囲にはすでに上り坂を歩く人もいて、それぞれのオクム踏破作戦が始まっている。
そうこうしているうちにRCの女性エース、ヤグちゃんに抜かれる。声をかけられてようやく覚えてもらったかなと喜んだが、チームのユニフォームの恩恵だと気がつく。
でも、そう悪い気はしない。
次にきのこさんに抜かれ、これまた足どりはすこぶる軽やか・・。気がついたら、チーム12人中の後ろから2番目、いわゆるブービー賞になっている。けっこう凹みながら鎌北湖が近づいてきた頃には、すっかりミストシャワーのような雨になっていた。



■鎌北湖→折り返し(46.4km)

鎌北湖のエイドステーション(AS)で、おにぎりを美味しそうにほうばるきのこさんをスルーして最初の急坂に入る。

さすがに4回目ともなると気持ちにもいくらか余裕がある。
上り坂はとにかくローギアで、坂の頂上を見ると気持ちが滅入るから目線を落として、小さなステップで脚を動かし続ける。あまり格好のいい絵柄ではないのだが、いまの体力、脚力ではこのスタイルしかない。
5月の最初の試走ではある傾斜を超えると歩くしかなかったが、この日は不思議と歩かないでいけそうな気がする。

奥武蔵のASは噂どおり素晴らしい。種類が豊富で、おにぎり以外にも、蒸しパン、お粥、ジャガイモ、ソーメン、冷やっこ、カキ氷、スイカ、メロン、トマト・・・。飲み物も水はもちろんコーラ、カルピス、紅茶、スポーツドリンク時には麦ジュースも。選り取りみどりの豪華なメニューが揃っているが、しばらくは水分と果実程度の補給だけ、休憩も30秒程度に抑えて次に進む。

お天気が良ければ、自然の中で木々のざわめきや鳥のさえずりでも聞きながら走ろうかと思ったが、やまない雨の中では音楽でも聴きながら気を紛らすしかない。
ミスチル、斉藤和義、なぜかフジコ・へミングウェーなど・・。
本来はFMラジオ派なのだが、この山中では電波が届かないのでしかたない。

ふと横を見ると、きゃぷてんが自転車で併走してくれている。
こんな雨ん中なのにね・・、すまんね。
傘杉峠でRCの応援部隊のフルさん、タムくん、Nogaくんの期待の若手トリオ(?)とこけさんに遭遇する。来年の奥武蔵は君らでがんばってくだされ。
前とどれだけ離れているか聞きたくもあるが、怖いのでやめる。

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高山ASでハジさんを発見。
外国で日本人に出会ったようで妙に懐かしい。
上りは歩きも交える作戦のようなのでやむなくお先にするが、RCでも飛びきりのタフガイより前に行くのは、多少の遠慮と不安を感じる。

飯盛峠を過ぎたあたりから、折り返してきたトップランナー達とすれ違い始める。
みんな平地を走る、いや飛ぶように駆けていく。
こっちは地べたを這っているのに、同じコースで別の競技をやっているような感じだ。なんとも、うらやましい・・。そして、ついに江戸一のトップでシゲさんとすれ違う。
かなり、速いのでは・・。
富士登山の雨天短縮のうっぷん晴らしの大爆発だな。
カズさん、イタジューさん、セコさん、ヒロくん・・、次々とすれ違うRCのメンバーからハイタッチで元気をもらうが、なぜか智さんだけ空振り。こんなところでもギャグを入れてくる余裕は見事だ。

刈場坂峠に着いて入念にストレッチを施す。致命傷はないが、すでに5時間以上が経過しているので、あちこちの筋肉が収縮して硬直しはじめている。ここから先は試走でも未踏のコースで、脳裏に不安がよぎる。折り返しまで残り6〜7kmのはずなのだが、やたらと長く感じる。
後から思うと、ここが精神的に一番しんどかったところかもしれない。 折り返しの県民の森まであと少し、RCでいくらか先輩のエムケンさんとすれ違う。表情から見うけるに、かなりお疲れモードのようだ。
じつは彼とは番外編で個人戦を握っている。
その差は目測で1kmちょっと、こっちの脚も予想以上に消耗していて、追撃するには微妙な距離だ。
本音を言うと、もっと開いていたらいっそのこと諦められたのに・・。
しかし、ここは焦る気持ちをぐっと抑えて、休憩とストレッチに長めの時間をかける。
名物のかき氷もこのお天気なので触手が伸びない。
横には名物のビキニのお嬢さんもいたが、気の毒に雨カッパを着ていて、いまひとつ盛り上がっていない。ツーショットの一枚でも欲しかったが、気持ちの余裕もなかったし、まずカメラがなかった。



■県民の森→ゴール

折り返してからは、残りの距離は30km余しかない。
コースの全貌もわかったし、全体的には下りのコースになって、よっぽどのアクシデントが起きない限り、もうリタイアすることはないだろう。
残ったテーマは、「ノーウォーク」と「打倒エムケンさん」にどう折合いをつけるか。
追いかけて消耗し過ぎると、最後の急坂で脚が残っているかどうかわからない。
そんなことを考えながら復路を流していたら、右の股関節とひざに違和感を覚え始めてきた。
フルマラソンでも同じ場所が痛み始めたことがあるが、次第に収まったのでここはじっと我慢するしかない。
次には雨でワセリンが流れてしまったのか着ズレやら股ズレが・・。
そして、極めつけは強烈な胸やけがしはじめる。
次から次と、いいかげんにしてくれぇ〜。
でも、小さいことはあまり気にせずに走り続けるのが一番かもしれない。

ハジさんに抜かれ、きのこさん、おーのさんともすれ違い、これで順番が入れ違わない限りRCのメンバーと顔をあわせることがなくなった。
だんだん人影もまばらになってきて、前後に誰もいないエアポケットみたいな瞬間がしばしば訪れる。マラソンなんて一人きりでしょせんはこんなもんや。
刈場坂峠を過ぎた下り坂でものすごい霧が出てきて、ほとんど前が見えなくなる。
一般の車も時折通過するので、かなり怖い。
霧が薄くなったかと思えば、今度は雨足が激しくなり、山の雨は一粒がやたらでかい。
靴の中は水浸しでグチュグチュいって気持ちが悪いが、御徒町のスポーツ店の兄ちゃんに薦められた地下足袋みたいなアディダスがグリップ力を発揮して、下りでもあまり足を滑らせることはない。

高山不動、顔振峠と通過してゆき、見慣れた景色で安堵感も出てくる。
右の股関節の違和感も消えていて、疲労以外は脚にも故障は感じない。
ここまでくれば、あとは這っても転がってもゴールはできる。
そうだ、エムケンさんを追わなくては。
一度も競らないのじゃ洒落にもならない。
そして、同時に自分でもずっと頭の片隅に追いやっていたあることがフッと浮かんできた。

ひょっとしたら、9時間を切れるかもしれない?

ゴールまでは15km足らずといったところ、ラストスパートには長すぎるがせっせと走る。
時間も惜しくなってASもそそくさと離れるが、あそこだけはしっかりと立ち止まる。
そう、「金麦」が待っている・・。塩味の効いたきゅうりのお漬物とポテチがうまくて、ついお代わり君・・。さすがに三杯めをいただいたら、もうどうでもよくなってしまうのでご馳走さまをする。
ASの方々、ありがとうございました。

そして、とうとうその瞬間がきたぁ〜!
一本めの上り坂でエムケンさんの背中をロックオン!
長かったぁ〜。
ここまでスタートから70km、トミー・リー・ジョーンズも真っ青の8時間を超える追跡劇がようやく終わる。一瞬、並んでゴールの絵も頭に浮かぶが、この歳でお互いそれは見たくないなと思い直して、一気に抜かせてもらう。
エムケンさんも、がんばってくださいな。 でも、かなりしんどそう。
次に、ハジさんの背中が視界に入る。さすがのタフガイもひざを痛めたそうで、ここもお先に失礼する。 最後の難関、"ユガテの坂"は相変わらず険しくやたらと長い。
「○×★△〜!」と意味不明な雄叫びをあげながら走る。
さっき飲んだ二杯のバイオ燃料もいい感じで効いている。
もう少しで頂上だ。
でっ、できた・・、上りきれたやないか。
あとは下る一方だが、時計を見るとサブ9には3〜4分届かないような計算になる。
それでもあきらめずに長い下り坂をしばらく粘っていたが、40歳前後の男性がものすごい勢いで横を駆け下りてゆく。これについてゆけば、きっと8時間台に手が届くのだろうが、すでにひざと腿も限界で、もう追いかける気力も残っていない。
ここまでやなぁ・・。

最後のASに向う鎌北湖の湖岸を流しながら、きょうはじめてゆっくりと景色を眺めたような気がする。あぁ、楽しかった・・。あとは江戸一のメンバーの待つ運動公園へ笑顔で戻るだけだ。
さて、どんなポーズでゴールしようか。
来年はもうちょっと下り坂の練習をしとかにゃ・・・。
これで参加者の平均年齢が高くなるんやなぁ・・。

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ゴールの手前で黄色い江戸一ノボリを持ったコケさんが見える。帰ってきた・・♪

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posted by 江戸一RC at 21:00| Comment(0) | 大会レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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